アプリ開発2026.05.1010分で読めます

100万円で、アプリ開発はどこまで出来るか

「100万円でアプリを作れますか」という相談はよく来る。 条件次第で可能、というのが正直な答えだけど、削るところが多い予算なので 「何を削れるか」「何は削れないか」を発注側が握っていないと話が進まない。 実際の内訳と、よく勘違いされるところを書く。

100万で組める「現実的なスコープ」

100万でアプリを成立させようとすると、ほぼ自動的に Flutter + Firebase 構成に寄る。 これは技術的にイケてるからじゃなくて、単純に工数が圧縮できる組み合わせだから。 個人法人やマイクロ法人で受けるとき、現実的に乗せられるスコープはこのあたり。

  • iOS/Android 両対応(Flutter で1コードベース)
  • メール+パスワード or SNSログイン1種
  • 基本的なCRUD画面が5〜8画面
  • Firestore でデータ管理、画像はFirebase Storage
  • Push通知(Firebase Cloud Messaging)の基本実装
  • App Store / Google Play への申請サポート(証明書・スクショ・審査対応)
  • 軽い管理画面(Web)— Next.js で簡素な運用画面1つ
  • 納期2〜3ヶ月

実工数で60〜70人日。1人で動くなら時給5000円換算で約400万に見えるけれど、 Flutter + Firebase の定型部分を再利用してこの工数まで圧縮するのが個人法人の得意領域。 「ゼロから組み直す」前提だとこの値段では成立しない。

100万に「乗らない」典型パターン

相談を受けて「これは100万では無理」と返すのは、だいたいこのへん。

機能の組み合わせで詰むケース

  • SNS連携(投稿/タイムライン/DM)と、定期課金、Push通知オーケストレーション、全部入り
  • 動画アップロード+トランスコード+ストリーミング配信
  • 位置情報トラッキングを常時動かす(バックグラウンド精度要求あり)
  • BLE や NFC など、ネイティブハードウェア連携が中心の体験
  • 3D描画、AR、ゲーム的なリアルタイム同期

これらは Flutter プラグインやFirebase だけでは賄えなくて、 ネイティブの Swift/Kotlin で薄いラッパーを書く工数が乗る。 1機能あたり追加で30〜50万は見ておいたほうがいい。

非機能要件で詰むケース

  • 同時接続数千〜万人を想定した負荷試験とインフラ設計
  • 個人情報保護法・GDPR対応、医療や金融の業種規制対応
  • SLA担保や24/7障害対応の運用体制
  • 大手企業のセキュリティ監査対応(脆弱性診断、ペンテスト)

この帯を要求する案件は、そもそも100万円帯の制作者を呼んでいない。 要件として書いてあったら、運営側で「この案件は100万帯では成立しない」と発注者に戻す。

削れるところと、削れないところ

100万でアプリを通すには、機能の優先順位を発注側で握る必要がある。 現場で削りやすいところと、削ると後で痛いところを並べる。

削っていいところ

  • iOS と Android 両方の同時リリース → 片方だけ先行
  • デザインカンプ複数案 → 1案で進めて修正で寄せる
  • 細かいアニメーション → 標準のマテリアルデザインで通す
  • ログイン方式 → メールアドレスのみでスタート、SNSログインは後追加
  • 管理画面のリッチさ → Firebase コンソールを管理画面代わりに使う割り切り
  • 多言語対応 → 日本語のみ

削ると後で痛いところ

  • テスト工数。バグだらけで申請に出すと、ストアリジェクト + 信用毀損で結局倍かかる
  • 申請対応の工数。Apple の審査ガイドラインは慣れてないと2〜3往復が普通
  • クラッシュ計測(Firebase Crashlytics 設定)。これを抜くと運用フェーズで地獄を見る
  • 規約・プライバシーポリシー。雛形流用でも法的に最低限は要る
  • 本番環境とステージング環境の分離
「テストを削れば安くなりますか」とよく聞かれる。 確かに見積もりは10〜15万下がるけれど、リリース後の不具合対応が10倍以上の工数になることが普通にある。 これは削らせない。削らせる業者がいたらそれは別の意味で危ない。

運用フェーズの予算は別建て

100万はあくまで「動くアプリを出すまで」の予算。 リリース後のサーバ代、ストアの年会費、不具合対応、機能追加は別の話。 ここを発注側で見積もれていないと、リリース直後に詰む。

  • Firebase の利用料。MAU数百〜数千ならほぼ無料枠、それ以上で月数千〜数万
  • Apple Developer Program 年12,800円、Google Play 初期25ドル
  • 軽微な不具合対応・OS更新追従に、月3〜10万のリテイナー契約が現実的
  • 機能追加は機能単位で都度見積もり

100万円帯がハマる発注者像

この予算で組むのが効くのは、「動くMVPを最速で出して、ユーザー反応を見てから次の投資判断をする」スタンスの発注者。 最初から完成形を100万で作ろうとすると、どこかで必ず詰む。

逆に、社内資料で「このアプリでこういうマーケット獲りに行く」と打ち上げてしまっていて、 機能を削れない事情がある場合は、最初から300〜500万の予算を取りに行ったほうが早い。 100万で受ける個人法人は、削れないスコープを通すための交渉力が制作会社ほど強くない。 結果として「言われたまま作って、リリースで詰まる」ことになりやすい。

判断に迷うときは、要件を書き出す前に運営側で30分話す。 「この機能セットで100万に乗るか」は、ヒアリング1回でだいたい見える。

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